名医やトップドクターと呼ばれる医師、ゴッドハンド(神の手)を持つといわれる医師、患者から厚い信頼を寄せられる医師、その道を究めようとする医師を、医療ジャーナリストの木原洋美が取材し、仕事ぶりや仕事哲学などを紹介する。今回は第2回。2015年には年間1万0398件もの手術を執刀し、ギネスブックに世界記録を申請。出血ゼロの「フェイコ・プレショップ法」の開発者として知られ、世界一多くの患者を“白内障による失明から救ってきた”眼科医、赤星隆幸医師を紹介する。
「難易は高いが僕ならできる」
診察後すぐに言いきった
2018年5月、編集者のIさんと久々に再会した筆者はドキッとした。Iさんは17年の暮れまで、有名女性誌の編集長を務めていた人。知的で可愛らしかったのに様子が一変し、ボロボロになっていた。
髪はパサつき、ヘアカラーした根元が伸びて白髪が目立つ。ノーメイクなうえにスーツもよれよれ、顔色も悪い。編集長を降りたのは目の病気が原因と聞いていたが、治療がうまくいっていないのだろうか。尋ねてみると、信じがたい答えがかえってきた。
「網膜の病気になり、1~2月にかけて大学病院で冷凍凝固術という手術を受けました。手術後の経過がよくなくて、右目の視力は0.3に。左目は手術前が1.0でしたが、いまは0.4くらいまで下がり、常に濃いサングラスをかけているような暗い感じがします。近くも遠くもよく見えません。網膜疾患はメガネをかけても矯正できないので、悪くなったらそのままにしかできなくて、日常生活でもとても困っています。
右目は手術の影響で白内障が進行したもので、眼内に硝子体がないため再手術は難しい。左目は、網膜が再剥離しているのでもう一度手術した方がいいと勧められました。
でも正直、執刀医を信頼できないし、その先生自身、関連病院に異動してしまったので、『次の先生にしてもらってください』と言うのです。無責任だと思います。もう、どうしたらいいのか分かりません」(Iさん談)