その後、被告から「殺してくれ」と言われるようになった。両親が現実にできることは、何もなかった。もちろん、被告が無関係な被害者に危害を加えた行動は責められるべきものであり、とりわけ子どもたちの心身に与えた傷を考えると、その責任は取らないといけない。

発達障害による聴覚過敏に
なぜ周囲は気づかなかったのか

 しかし、被告は以前、筆者が拘置所で面会したときにこう漏らした。

「この拘置所に来て、初めて人間らしい扱いをされたように思います」

 それまでの人生で、人の優しさに触れることが、あまりなかったのかもしれない。

「もともとは、悪ではなかった。地域がきつかった」

 被告は、面会した筆者に、なかなか言語化できない言葉を一生懸命訴えてきた。

「先生たちの声がうるさい」

 ある日、被告は家族に、こども園の若い先生数人が隣接する駐車場で長い間しゃべっていて気になると言いだした。我慢できなくて、何回か「うるさい」などと抗議にも行ったが、なかなか声にならずに、施設側には「伝わらなかったようだった」と、筆者に対して振り返る。

 周囲の誰かがもっと早く被告の「聴覚過敏」という発達障害の苦しみに気づいて、理解してあげられていれば、もっと違った接し方や配慮をすることもできたのかもしれない。