だが、移行期間の延長はEU加盟期間の延長であるため、英国が第3国と独自に通商交渉する裁量は封印され、しかもEU予算への追加的な拠出も求められるようになる。英議会ではこれに不満を抱く向きもある。

Q:バックストップ案で最も問題視されているのは何か?

 バックストップは文字通り「保険」であるため、英国、EUの双方にとって必要なものであり、互いの損得を踏まえた「実現できる最良で唯一のディール」なのだが、英国内の政治情勢がこの受け入れを難しくしている。

 どのような部分が最も問題視されているのか。問題は主に2点ある。1つがメイ政権に閣外協力するDUPの反対、もう1つがバックストップの永続可能性である。

 まずDUPは何が不満なのか。DUPはアイルランド再統一に反対し、英国との統一を志向する政党である。英国との統一感が損なわれる決定は同意できないという基本認識がある。

 しかし、上述の通り、バックストップが発動すれば、北アイルランドだけが単一市場に残ることで特別な規制を受ける。これにより北アイルランドがそれ以外の英国(ウェールズ、スコットランド、イングランド)と分断される。

 規制面でアイルランド島に置き去りにされることで、なし崩し的にアイルランドとの統一が図られるのではないかという危惧が現行案への抵抗につながっている。下院で10議席を有しているDUPの意向をメイ政権がないがしろにできないという苦しい台所事情が相まって事態を複雑にする。