ですから警察の不祥事ゼロというのは、理想ではありますが、社会学的に言えばその達成は無理な相談です。

 今回の事件の本質はそれと同じで、教育しても必ずそれを守らない不届き者は出てくるというところに問題の本質があります。ですから、抑止力が必要なのです。

バイトに緊張感を与え続ける
法的措置が示す企業の「限界」

 私事ですが、まだ18歳だった当時、マクドナルドでアルバイトとして働いていたことがあります。マクドナルドのバイト仲間は仲が良くて、いつもバイト明けには一緒に遊んでいたのですが、その中の人気者だった男の子が突然、解雇されたことがありました。ある日、出勤すると事務所に「不正行為により解雇」という紙が表示されていて、バイト仲間みんながショックを受けたのを覚えています。

 彼がやったことは、揚げたフライを冷ましておくトレイに残った揚げかすを口に入れたことでした。お腹が空いていたときに、うっかりやってしまったそうです。彼が解雇されたことで、バイトの間に緊張感が高まったという効果が実際にありました。そんな些細な緩みも、ここでは許されないということです。

 今回問題になっているのは、それよりもはるかに大きな緩みで、損害賠償額が数百万円だとしても、抑止力としては大手チェーンの数千人から数十万人いるバイトのかなりの人数に対して効き目のある「教育的事例」になるでしょう。しかし同時に、数千人から数十万人いるバイトの中のほんの一握りの愚かな人には、きっと抑止力にはなりません。不適切動画の投稿は。繰り返し発生することでしょう。

 限界はわかっている。しかし、組織を引き締めないともっと頻繁に再発する――。今回の法的措置は、企業から見れば仕方のない対処だということでしょう。

(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)