名医やトップドクターと呼ばれる医師、ゴッドハンド(神の手)を持つといわれる医師、患者から厚い信頼を寄せられる医師、その道を究めようとする医師を、医療ジャーナリストの木原洋美が取材し、仕事ぶりや仕事哲学などを紹介する。今回は第3回。数あるがんの中でも、肝臓・胆道・膵臓にできるがんは発見が困難なためにたちが悪く、特に膵臓がんは最も恐れられている。これらがんの治療、肝胆膵外科として著名な静岡県立静岡がんセンター院長代理、肝・胆・膵外科部長の上坂克彦医師を紹介する。

膵臓がんの術後生存率を
飛躍的に高めた

静岡県立静岡がんセンター院長代理、肝・胆・膵外科部長の上坂克彦医師静岡県立静岡がんセンター院長代理、肝・胆・膵外科部長の上坂克彦医師 Photo by Motokazu Sato

 がん医療の最高峰といえば、「国立がんセンター」か「がん研有明病院」が真っ先に頭に浮かぶ。しかし、上坂克彦先生が院長代理を務める「静岡県立静岡がんセンター」は2014年、ダイヤモンド社が実施した「がんに強い病院ベスト500」において、国立がんセンターを抑えて2位にランクインした。

(大都市圏の病院ならともかく、地方の県立病院がどうして2位になれたのか――)

 失礼ながら不思議に感じた筆者は、さっそく同院を訪れ、病院設立の企画段階から責任者を務めてきた山口建総長に尋ねてみた。

「我々は当初から、世界一の患者志向型病院を目指してきました。そのために、国立がん研究センターなど日本中からベストな医師を呼び集め、最高の設備で治療しています」

 総長は、余裕の笑顔で答えてくれた。

 そんな「ベストな医師」の中でも、名医として、尊敬を集めているのが肝胆膵外科の上坂先生だ。

 数あるがんの中でも、肝臓・胆道・膵臓にできるがんはたちが悪い。これらの臓器は、よほど症状が進行したがんでないと発見が難しい「沈黙の臓器」だからだ。とりわけ恐れられているのは、「がんの王様」と呼ばれる膵臓がんだ。