事例 4 事業の取捨選択

会社の“健康診断”は
経営戦略見直しの好機
【みちのく銀行】

 事業承継でできることは、何も自分が育ててきた会社をそのまま誰かに引き継ぎ、次代に残すことだけではない。

 せっかく会社の“健康診断”をするのだから、経営戦略の見直しや事業の取捨選択について、立ち止まってあらためて考える好機でもあるのだ。そして、そのことは、会社に残る側の事業や従業員にとってはもちろんのこと、実は会社から離れることになる側にとっても「幸せへの道」になることがある。

 その好例といえるのが、みちのく銀行(青森県)が昨年後半に手掛けた事業承継の案件だ。

 その案件でみちのく銀行は、売上高数十億円で数社の子会社を持つ小売企業に対して、親族内での事業承継の支援をしていた。

 ところが、話を進めていくうちに、売上高数億円の子会社1社が、自助努力による成長や従業員の雇用条件の改善について、悩みを抱えていることが分かった。というのも、その子会社の事業は専門技術分野であり、小売業である親会社やその他の子会社とのグループシナジーがなかったからだ。

 そこで、みちのく銀行は親会社への事業承継支援と同時に、その子会社に関する課題解決の方策として、M&Aによる会社譲渡を提案。その結果、同業で上場間近ともいわれる首都圏の有力企業の傘下に収まる運びとなった。

 親会社から切り離されるというとネガティブな印象を持つかもしれないが、正反対の場合もある。この子会社はM&Aの成約後、将来のビジョンが明確になり、それまでの閉塞感から解放された。また、買い手が同業かつ有力企業であるため、この子会社への投資にも積極的。人事研修なども非常に充実しており、目に見えて、従業員たちが生き生きとしてきた。

 そのため、「その子会社の役員や従業員には大変喜ばれた」(みちのく銀行地域創生部)という。

 中小企業の場合、この事例のように子会社が複数あるところはそう多くないかもしれない。ただ、会社の歴史の中で、本業とあまり関係がない事業にも手を出している企業はたくさんあるだろう。

 当時はその事業がもうかっていてそれでよかったかもしれないが、時代は移り変わっていく。それとともに、その事業のライフサイクルが成熟期、衰退期へと移行しているというのは、よくある話だ。

 これまで長きにわたって自分の会社を育て、従業員を守ってきた経営者に限って、「自分が去った後の会社のことはどうでもいい」という人は、まずいないはず。

 金融機関をはじめとして、事業承継のパートナーは経営者に対して、「この事業を売った方がいいのではないか」とは、言い出せないものだ。チャンスを逃さないためにも、事業承継の際には、経営者は自ら事業の選択と集中について、事業承継のパートナーに話を持ち掛けてみてはいかがだろうか。