耳が遠くなった高齢の母親と同居する50代息子の悩みとは耳が遠くなった高齢の母親と同居する50代息子の悩みとは(写真はイメージです) Photo:PIXTA

1919年、今からちょうど100年前、日本のストレス社会を予期していたかのように、森田正馬博士(慈恵医大精神神経科初代主任教授)は、神経症の治療「森田療法」を提唱しました。葛藤、ゆらぎに“あるがまま”に従う森田療法は、「モリタ・セラピー」として世界に広まり、神経症者の救済に顕著な業績を上げました。この療法をヒントにして「職場」や「家庭」、「介護」で、「私、大丈夫かな?」と思っていることなど、不安な現代を生きる私たちの身近で「切実な苦悩」にどう対応すべきか。日本森田療法学会理事長の中村敬先生が解説していきます。(談/東京慈恵会医科大学附属第三病院院長・森田療法センター長 中村 敬、構成/慈恵大学広報推進室 高橋 誠)

高齢の母親と同居する
50代男性の悩み

 第1回は、高齢の母親と同居する50代男性(未婚)の事例をご紹介します。母親は耳が遠くなっていることに加え、軽度の認知症もあり、しばしば理不尽な態度をとります。男性は、親孝行をするつもりで同居したのに、このままでは堪忍袋の緒が切れて、感情を爆発させてしまうかもしれないと悩んでいます。どうしたら気持ちを落ち着かせ、母親に対する愛情と優しさを持ち続けることができるのか。介護をする方の多くが直面する、心の悩みの対処法について、中村敬先生にご相談しました。

相談の内容
「耳が遠くなった母と口論が絶えない」

 母との同居を始めて3年。耳が遠くなった母(85歳、要介護1)に対し、ゆらいだ感情を抑えられないとき、我慢して心を落ち着かせるようにしています。

 とはいえ、母にこれ以上なく優しく語りかけたつもりが、「何でそんなに厳しい口調で言うのよ!」と怒られ、口論になり3日間、口もきかないこともあります。

 先日も「夜中の3時にトイレで目が覚めたら、リビングの電気がついていたから、消しておいたわよ」と一方的に言われ、ついカッとなり「先に寝て朝まで目覚めなかった。人のせいにするな。入眠剤を飲んだら、何もせずに早く寝ろ!」と罵声を浴びせてしまいました。