現在、介護を理由に仕事を辞める人は年間10万人以上と言われている。もはや多くのビジネスパーソンや企業にとって「介護離職」は無関係な話ではない。そんな中、誰もが自然に家族の介護に向かうことができる社会の実現を目指し、年間40回の講演と80人の個別サポートを続けているのが、『もし明日、親が倒れても仕事を辞めずにすむ方法』(ポプラ社)を上梓したNPO法人となりのかいご代表理事の川内潤氏だ。川内氏がはじめてこの問題に直面したのは、ある高齢女性のケアを通してだったという。その女性が放った「死にたい」の一言から見えてきた、ビジネスパーソンが親の介護を直接すべきでない2つの理由とは?

介護離職で親子共倒れ!ビジネスパーソンが「親の介護」を直接すべきでない2つの理由

「あたし早く死にたい」といったある高齢女性

現在、介護で仕事を辞める人の数は、少なくとも年間約10万人。これは把握されている数に過ぎないので、実際にはもっといると言われています。

介護保険の対象となる「要支援」「要介護」の方の割合を見ても、65~74歳で4.3%だったのが、75歳以上になると一気に32.5%まで増え、介護が必要になる人は年齢が上がるにつれて増加します(厚生労働省「平成27年度 介護保険事業状況報告(年報)」をもとに推計)。

また介護が必要な親がいる割合は、41歳~45歳の方で10.5%ですが、46~50歳になると15.8%、51~55歳で21.3%となり、56~60歳では23.5%と、およそ4人に1人がなんらかのかたちで介護と関わらなければいけない状況です(ダイヤ高齢社会研究財団「仕事と介護の両立と介護離職に関する調査報告書」2015年3月)。

これが私たちの直面している現実です。私は一般企業で講演や相談をする機会が多いのですが、こうしたデータと一緒に、「介護のために仕事を辞めてはいけない」というメッセージを必ずお伝えさせていただいています。

私は大学の福祉学科を卒業したのち、外資系コンサル会社にいったん勤務、それから介護業界に転身したという少し変わった経歴を持っています。実家が介護サービス会社だったので、当初はそこの職員として訪問入浴などの現場を数多く経験しました。

その中からひとつ、印象深いエピソードを紹介しましょう。
「川内さん、私ね、本当はもう早く死にたいのよ」
そうおっしゃった、ある高齢女性のことです。