世界でも最速のペースで高齢化が進む日本は、間違いなく「介護先進国」である。「日本の介護」を中国やアジア諸国に“輸出”する動きもあり、中国には日本の介護事業者も相次いで進出している。今年からは外国人技能実習制度で介護職の受け入れも始まった。「日本の介護」は、現時点では相対的に優れているのかもしれないが、それほど圧倒的に優れているのだろうか。日本と中国の介護事情に詳しい日中福祉プランニング代表の王青氏に、あえて日本の介護事業者に対し、“遠慮のない辛口視点”で寄稿してもらった。
「日式介護」の施設は
中国では苦戦している
日本は、中国より20年早く高齢化社会を迎えた。2000年にスタートした「介護保険制度」もアジアの国々から注目され、「先行モデル」のような存在だ。こうした事情もあって、日本政府は「アジア健康構想」を立ち上げ、介護予防やリハビリなど高齢者の自立支援ノウハウ中心とした「日本式介護」をアジアへ向けて“輸出”しようとする動きが活発化している。
一方、中国も高齢化が進みつつある。60歳以上の高齢者はすでに2億4000万人を突破し、中国政府は民間企業も活用し、全力を挙げて高齢社会への対応を猛スピードで進めている。
中国の介護市場は巨大であり、潜在性もある。しかも、日本政府はアジアへの「日本の介護」の輸出を奨励している。このため、すでに中国には、いくつかの日本の介護関連企業が参入しているが、その多くが苦戦しているのが実情だ。その厳しい状況は数年前から続いており、今も改善していない。
そもそも「日式介護」と特色をうたっていても、人が密接に関わるのが介護サービスであり、現地の文化や習慣に関係する面も多いため、工業製品のように「良さ」を伝えるのは簡単ではない。結果的に、現地の介護施設との差別化が十分に発揮できず、インパクトに乏しいものになっている。ゆえに、現地ではそれほど大きな話題にはなっていない。日系の介護施設は20~100床規模のところが多いが、これら介護施設では軒並み入居率が低迷し、ほぼ満床になるまでに3~4年はかかった。