世界各国で政治家が金融政策への圧力を高め、中央銀行の独立性が脅かされている。今のところ、投資家はさほど懸念していないようだ。ことの重大さに気づいた時には、遅すぎるかもしれない。フィリピンのロドリゴ・デゥテルテ大統領は5日、同国中銀の総裁に腹心のベンジャミン・ジョクノ予算管理相を指名した。ドゥテルテ氏はこれまでにも論争を巻き起こす行動を取ってきた。ジョクノ氏はエコノミストでテクノクラート(実務官僚)でもあるが、フィリピン中銀が独立機関となった1993年以降で内閣から総裁に直接起用される初の人事となる。ジョクノ氏は予算管理相として財政赤字の拡大を提唱した。ドゥテルテ氏が総裁に推すのも不思議ではない。融資促進を目指し金利を低水準に維持する傾向がある中銀当局者の弁は、支出を止めたくないポピュリスト指導者の耳には音楽のように心地よく響く。