近年、脱力を求めるビジネスパーソンが急増している。これはワークライフバランスの充実という意味に限った話ではない。キャリアアップ、あるいは自己実現を果たすために、脱力が求められているのだ。『心を削らない働き方』(CCCメディアハウス)の著者で、コーチ・コンサルタントの山口由起子氏に聞いた。(清談社 岡田光雄)
平成終了間近の今も続く
昭和の非効率な働き方
「現代のビジネスパーソンには脱力が必要です。脱力ができていない人は、常に仕事に対して将来的な不安を抱えている状態(不安状態)で、『必ずこうしなければいけない…』という強迫観念に縛り付けられています。そういう状態で選択した行動は往々にして裏目に出てしまい、うまくいかないもの。仕事で結果を出せないし、たとえ結果を出していたとしても、疲弊し切っていて不安な状態になっていることがほとんどなのです」
山口氏はビジネスパーソンに対して脱力の必要性をこう訴える。昨今、ビジネス系の書籍や記事の見出しには「脱力」というワードが踊っている。多くのビジネスパーソンは、ストレスフリーな働き方を模索しているようだ。
その理由について、山口氏は次のように語る。
「おそらく多くのビジネスパーソンは、ずっとアクセルを踏み続けるという働き方はコスパが悪いと、ようやく気付き始めたんだと思います。昭和の時代は、明確に成功モデル(裕福な家庭像など)がありましたが、今の時代はどれだけ頑張っても給料は上がりにくいし、お金を得るためには体力や時間を犠牲にしなければいけない。そうなると仕事そのものが苦しくなる。そういう脱力のない働き方をしていると、人生の生産性はどんどん下がっていくんです」
多くの人は起きている時間帯のほとんどを仕事に充てている。そのため、働き方の生産性が下がれば、人生にも悪影響を及ぼしてしまうのだ。