「かわいい子と食べるごはんはおいしく感じるんだよね」
そう男性が言い放ったとき、同席していたほとんどの女性の反感をかっていたが、個人的には「なるほど」と納得したことがあった。
少なくとも、上司に嫌味を言われながら食べる食事より、好きな人と食べる食事の方がおいしく感じるし、デスクでパソコン作業をしながら食べるおにぎりと、山のてっぺんで食べるおにぎりは、まったくの別物に思える。派手な外食が続いた後の、ひとりで食べる納豆ご飯とおみそ汁は、星付きのお店に勝る気すらする。このように、味覚というものは、環境や気持ち、コンディションによって左右されるものではないだろうか。
何かしらの理由があって、食生活を変えていこう、と思うとき、私たちはついつい食べる“もの”に注目をしてしまいがちだ。食べる自分の“状態”に目を向けている人は非常に少ない。
しかし、本当は、同じものをいただいたとしても、心の在り方ひとつで、その消化吸収には違いが生まれる。リラックスしたり、楽しいな、と思う気持ちでいただくと、体の中では副交感神経が優位になり、消化吸収がスムーズにいく。それによって、より栄養を吸収できたり、きちんと消化することで、結果として、脂肪をためこみにくい体になったりするのだ。
そうはいっても、体の中の消化吸収具合なんて見えないから、実感としてわかりにくいだろう。そんなときこそ「おいしく感じるかどうか」ということがひとつの指標になる。「おいしいもの=高カロリーで体に悪い」、「体に良い食事=おいしくない」なんて言われることもあるが、食べたことによって心が満たされ、あなたを笑顔にするごはんならば、最高だ。
大好きなラーメンをやめなくても
食生活は改善できる
連載2回目にして、いまさらながらに自己紹介をさせていただくと、私は、“栄養士”という職業を冠に、“食事カウンセラー”として仕事をしている。心療内科併設の研究所で食事カウンセリングをしているというバックボーンもあるが、食生活を改善するためには、できるだけ個々のクライアントの笑顔を生かす指針を目指している。そうでなければ行動変容に結び付く確率がゼロに等しく、心の面を無視することは決してできない。