平成最後の日本代表戦は、エースが放つまばゆい輝きとともに幕を閉じた。ボリビア代表とノエビアスタジアム神戸で対峙した26日のキリンチャレンジカップ2019で、森保ジャパンを1-0の勝利へ導く値千金の決勝ゴールを決めたMF中島翔哉(アル・ドゥハイルSC)は、この冬にポルトガルからカタールへ移籍して世界中を驚かせた。成長への道をヨーロッパの5大リーグではなく、ランクが大きく落ちる中東へあえて求めた、24歳の決断の背景を追った。(ノンフィクションライター 藤江直人)
ボリビア戦のゴールで垣間見せた
優れたストライカーの一面
この男にボールが渡るだけで、次は何を魅せてくれるのか、と胸がときめいてくる。コロンビア、ボリビア両代表と対峙した平成最後の日本代表戦で、誰よりもまばゆい輝きと群を抜く存在感を放ったのが、MF中島翔哉(アル・ドゥハイルSC)であることに疑いの余地はないだろう。
とにかく仕掛ける。主戦場とする左サイドから、細かいステップを刻んだドリブルで中央へ切れ込んだかと思えば、相手に中へのコースを警戒されるやそのまま縦へ抜け出していく。数人に行く手を遮られればマークが薄くなった味方へのパスを通し、遠目からでも積極果敢にシュートを放つ。
26日のボリビア戦で森保ジャパンを勝利に導いた決勝点は、中島がドリブラーだけでも、ましてやテクニシャンだけでもないことを物語っていた。ゴールネットが揺れ、ノエビアスタジアム神戸が大歓声で揺れた瞬間、日本が生んだ往年の名FW、釜本邦茂氏の言葉を思い出さずにはいられなかった。
「30cmの幅があればボールは通る。相手ゴール前でパスを受けたら、何よりもまずシュートを打てばいいんですよ」
エゴイストになれと説いているわけではない。自らが放ったシュートが決まれば言うことはないし、例え相手に防がれたとしても、次に何かが起こる確率が一気にはね上がる。シュートを打たなければ何も始まらないと、釜本氏はストライカーの視点から「30cm」を何度も強調した。
中島のゴールは電光石火のカウンターから始まった。後半31分、自陣のセンターサークル手前で、相手のパスミスを拾ったMF堂安律(FCフローニンゲン)がドリブルを発動させる。左側をMF南野拓実(ザルツブルク)、さらに左側を中島と途中出場の3人がグングン加速していく。