久保建英
J1開幕戦から2試合連続で先発出場を果たしている久保建英 写真:西村尚己/アフロスポーツ

開幕から2試合を終えた今シーズンのJ1戦線で、FC東京の17歳、MF久保建英が昨年までは見られなかった存在感を放っている。スペインの名門FCバルセロナの下部組織で磨き上げた攻撃力だけでなく、守備面でも泥臭さを厭わないハードワークを披露。長谷川健太監督が描いていた序列を鮮やかに覆させ、先発を勝ち取った変化の原点を探っていくと、出場機会を得られない状況に危機感を募らせた昨夏に、横浜F・マリノスへの期限付き移籍を熱望した久保を「可愛い子には旅をさせよ」の心境で送り出したFC東京の親心があった。(ノンフィクションライター 藤江直人)

「なぜJ1の試合で使ってくれないのか」
環境を変えようと横浜F・マリノスへ

 たった5ヵ月ほど見なかった間に自らの意思で、大人への階段へとつながる扉を開けていた。開幕から2試合を終えたFC東京で群を抜く存在感を放っている17歳、MF久保建英の何が変わったのかと問われれば、長谷川健太監督が発したこの言葉に答えが凝縮されていると言っていい。

「マリノスへ出て外の世界を知ったことで、子どもだったメンタルがだんだんと大人のそれに変わりつつあると思っている」

 横浜F・マリノスへの期限付き移籍が電撃的に決まったのが、夏の移籍市場が閉められる前日の昨年8月16日だった。長谷川監督だけでなく、FC東京を運営する東京フットボールクラブ株式会社の大金直樹代表取締役社長も慰留したが、環境を変えたいと望む久保の意思は固かった。

 プロ契約を結んで2年目だった昨シーズン。リーグ戦における軌跡はすべて途中出場で4試合、わずか58分のプレー時間にとどまっていた。しかも、後半33分からピッチに立った4月14日のセレッソ大阪戦を最後に、FC東京がU-23チームを参戦させているJ3へ主戦場が移っていた。

 これならば2017シーズンと状況は何も変わらない。なぜJ1の試合で使ってくれないのか――志半ばでスペインから帰国することを余儀なくされた久保が、下部組織のFC東京U-15むさしに加入した2015年5月から見守ってきた大金社長が、マリノスへ送り出したときの心境を振り返る。

「あの時はなかなか思い通りにいかず、(久保)建英自身がフラストレーションを溜めているタイミングだったので、メンタル的にもすごく不安定だったことをよく覚えています。FC東京にいることが建英のストレスになっていた部分もあったので、ならば少しでも環境を変えて、自分を高めてからまた戻って来い、という方針の下でクラブとしては前向きにとらえました」