立ちくらみ、倦怠感、動悸(どうき)、めまい、頭痛といった症状から疑われる病気はいろいろある。貧血、低血圧、不整脈、糖尿病、脳梗塞などだが、検査の結果はいずれも「問題なし」。“治療が必要な病気”は発見されなかった。

「特に心配な病気は見つかりませんでした。恐らく自律神経の乱れから来る症状でしょう。お薬はお出ししますが、気持ちを楽にして、よく眠れるようになるお薬なので、立ちくらみが消える薬ではありません。疲労やストレスが原因ですから、しばらく休養を取ってみてはいかがでしょうか」

 医師は気の毒そうに言うが、篤子さんは途方に暮れた。

(恐らくって、どういうこと?自律神経って何?結局、よく分からないってことでしょ?心配な病気がないって、死ぬような病気はないってことよね?でも、このままだと私、どうやって生きて行ったらいいの?こんなにつらいのに、治療してくれないの?休養したって、治るかどうか分からないなんて、一体どうしたらいいの?)

 絶望的な思いを抱えたまま、篤子さんは療養生活に入った。といっても、一日中ただゴロゴロしているだけ。ただし“病気ではない”ので、掃除や洗濯、食事の支度などの家事は必死にこなした。晋平さんも子どもたちも一切文句は言わないが、「お母さんはただ怠けたいだけなんじゃないか」と責められているような気がして、日に日に後ろめたさが募っていった。

 そして半年が経過したある日、明け方トイレに立った後、篤子さんは意識を失い、救急搬送された。

起立性低血圧で
脳神経内科の受診を勧められた

 篤子さんは病院のベッドで目が覚めた。傍らには、高校生の長女が心配そうに座っていた。