レビュー
在日30年、伝説のアナリストとも呼ばれたデービッド・アトキンソン氏による話題の一冊だ。人口減少・高齢化というパラダイムシフトが起きるなか、このままだと日本は三流先進国どころか途上国にまで転落するかもしれない――アトキンソン氏はそう警笛を鳴らす。だが一方で、日本がふたたび一流先進国に返り咲くための勝算もあるという。
本書『日本人の勝算 人口減少×高齢化×資本主義』では118人の外国人エコノミストの分析をもとに、人口減少・高齢化がもたらす難局を乗り切るための方法が考察され、日本経済が再生するための具体案が提示される。日本では今後、人口減少と高齢化によるデフレ圧力が深刻化するため、デフレスパイラルに陥る可能性が高い。そうした状況下で生き延びるには、生産性を高めて「高付加価値・高所得経済」の国へと転換しなければならないというアトキンソン氏の主張は理にかなっている。
本書が提言している生産性を向上させる具体的な施策は次の4つにまとめられる。(1)供給過剰を調整するための輸出振興、(2)企業規模拡大のためのM&A促進、(3)最低賃金引き上げ、(4)本格的な人材育成トレーニングの確立。本要約ではこのうち、アトキンソン氏がもっとも重視していると思われる最低賃金引き上げの項を主として取り上げた。