ただ、これでは現預金に結び付くのは中台連合が注入する600億円にとどまる。今後の成長に必要なiPhone向け有機ELの設備投資資金には遠く及ばず、一段の運転資金も必要になるため、さらなる資金調達が必須だ。JDIは台中連合とINCJからの支援策が固まると同時に、改めて主要3行と融資枠の設定について交渉していくことになる。

ベールに包まれてきた「台中連合」の正体

 これまでベールに包まれてきた台中連合の正体も明らかになりつつある。連合の取りまとめ役は、嘉実基金管理が海外のテクノロジー投資のために設立した「中国シルクロード・インベストメントキャピタル(CSIC)」のトップである馬文彦(ウィンストン・マー)氏。

 馬氏は英バークレイズや米JPモルガン、中国の政府系投資ファンドであるCICを経て18年からCSICに合流した国際派の金融マンだ。実は台中連合の名称は「SUWA(スワ)」という。観光で訪れた日本の長野県諏訪市の自然に魅せられて名付けたとして、親日家をアピールする。

 台中連合のうち唯一の事業投資家であるTPKは、タッチパネルをアップルに納入している。創業者の江朝瑞会長は、自らアップル向けの販路を切り開いて成長を遂げてきたたたき上げの人物で、アップルとの取引の苦労をJDIと共有する存在。タッチパネルの製造工程でJDIと事業面でのシナジーを狙う。

 富邦グループは、交渉の後半になって連合に参加したもようで、台湾経済界に人脈がある馬氏が呼び掛けたという。富邦を抱き込むことで中国色を薄めて経産省との交渉をスムーズに進めたい狙いが透ける。

 台中連合は、6月の株主総会に向けて経営チームを選定していく。関係者によると、CSIC、TPK、富邦からそれぞれ取締役を派遣するとともに、INCJも現在の取締役1人枠を維持する。

 病気療養中の東入来信博JDI会長兼最高経営責任者(CEO)は退任する見通しで、最大の焦点は次のCEOだ。台湾と中国、経産省とINCJ、そしてアップルの思惑が複雑に絡む中で、次期トップにだれを据えるか。これが経営再建の最大のカギを握る。