「人事採用を行う側が賞の価値を知らないことも、有り得ました。さらに、“一子相伝”のような文化や女性差別があったりすると、厳しさが増したでしょう。西村さんは、制度の転換期の谷間で、分野ギャップや世代ギャップの中で苦しまれたという印象を受けます。……現在であれば、“研究大学“に位置づけられる大学の人文系なら、ぜひ採用したいであろう方なのに」(隠岐さん)

 2000年代以後、大学の疑似企業化や、大学経営の疑似市場モデル化が進行し続けている。分野の多様性は学術研究の生命の源であるはずだが、“シワ寄せ“を受けやすい研究領域は確実に存在する。何があれば、少しでも西村さんの助けになっただろうか。

「大学あるいはアカデミアそのものではなく、その外、あるいは両者の中間的な場に『理解して、支えてくれる場』があると、かなり気持ちが違ってくる気はします。そういう場と何らかの就労支援がセットになっていると、より心強いでしょう」(隠岐さん)

 それなら、「そのもの」の制度が存在する。2013年に成立した法律に基づく、生活困窮者自立支援制度だ。この制度は、有効な救いの手になり得るだろうか。

救えたのは生活保護か
生活困窮者自立支援制度か

 羽曳野市で生活困窮者自立支援制度の運用に従事する仲野浩司郎さんは、生活保護を含めて公的福祉制度を熟知している。西村さんの状況は、仲野さんにはどう見えるだろうか。

「まず、“個人”の貧困を把握できないという問題が浮き彫りになったように思えます。西村さんは、ご自身に収入がない中で、ご両親と同居したり、結婚したりすることでなんとか生活を維持しておられたようですが、そのことが逆に、“個人”として救済を求めにくい結果につながったかもしれません」(仲野さん)