家の仕事をしなければ自分の手元にはお金がないわけですから、3食にありつくために、その子は一生懸命家庭内労働をして、また効率よく稼ぐためにやり方を工夫していたといいます。さらには、ルーティーンの仕事だけでは飽き足らず、両親へのマッサージを自主的に行い、定期的に臨時収入も得ていたそうです。それなりの貯金ができていたので、食いっぱぐれたことは一度もなかったと言っていました(笑)。

「さすがに私のうちではちょっと……」と思われる方も多いと思いますが、掃除代にしろ、食事代にしろ、リアルにかかっているお金ではなく「家庭内の適切なレート」で金額設定をすれば、あながち無謀なメソッドではないです。

 たとえば、子どもが手伝いをして無理なく稼げる1ヵ月の金額が1000円だとすれば、子ども部屋の1ヵ月の掃除代は200円、食事代は300円といったように決めればいいでしょう。あくまで、掃除や食事は無償で提供されるサービスでないことを子どもに伝えることが大切です。

部屋代を支払う義務が
あることを伝える

 金銭面に対してとてもシビアな両親に育てられたというのに、僕は社会人になっても実家で暮らしていました。いや、もちろん、家を出て独り立ちしなければいけないことはわかっていたのですが、就職してから2ヵ月が過ぎ、3ヵ月が過ぎても「出て行け」と言われないのをいいことに、「これはもしかして、このままいけるのでは……」と自分に都合よく解釈したのが大きな間違いでした。

 ある日、母から渡されたのは請求書でした。それも、ビジネスでも通用する形式の完璧な請求書です。今住んでいる家の広さから僕の部屋の占めるパーセンテージを導き出し、その数字をもとに実家で暮らした25年分の家賃や電気代が請求金額として明記されていました。

「これ、何?」。唖然としてたずねる僕に対し、母はとても冷静に「あなたが支払うべき、これまでの人生の経費よ」と答えました。最初は僕をこの家から追い出すための冗談かと思っていたのですが、話せば話すほど、母が本気であることがわかるだけでした。これはもう逃げられないと悟った瞬間、僕は請求書に書かれた金額の小切手を切り、身の回りの物をダンボールに詰め込んで家を出ました。のろのろと暮らしていた3ヵ月がウソのような早業です(笑)。