賢所という「最も神に近い領域」で祭祀を行う「内掌典」という女性たち内掌典が日常を過ごす場所の床はすべて畳。立つとき以外はずっと正座で過ごす。手が穢れないよう、料理や洗濯などの家事は一切行わない

皇居の奥の奥、うっそうとした森に囲まれた宮中三殿、そのまた中、賢所という最も神に近い領域で祭祀を行う「内掌典(ないしょうてん)」という女性たち。ベールに包まれた彼女たちの真の姿とは...?『週刊ダイヤモンド』2016年9月17日号の第1特集「日本人なら知っておきたい皇室」で掲載した記事を特別公開する。(高谷朝子さんご存命中に取材を行いました。高谷の高の文字ははしごだか)

戦中から昭和、平成を
皇居で暮らした神聖な女性

上空から見た宮中三殿 Photo:JIJI

「おそろいあそばしまして、なおなおご機嫌よう、満々年までも幾久しゅうご寿命ご常久さんご繁栄さんであられますよう、よろしゅうご祈念申し上げまして、お鈴をあげましてございます」──。

 かつて皇居で暮らしていたという老婦人は、「昔のことは忘れました」と言いながら、宮中祭祀の口上を、今もしっかりと、そして厳かに口にした。

平常着、内掌典は常に和服で生活するため、退職の際、高谷さんは「一着も洋服を持っていなかった」という

 高谷朝子さん、92歳(取材当時)。戦中から昭和、平成と、激動の時代を「内掌典」として皇居内で暮らした神聖な女性として、各界の著名人たちから崇敬を集めた。

 日本を代表するシンガー・ソングライター、小説家であるさだまさしさんも、その一人。「高谷さまは、祈りの国・日本において、一番の大宮司である天皇陛下の祭祀を、57年間お支えしてきた。彼女のお話を聞くにつれ、この国にとって非常にありがたく、稀有なお方だと深く感じ入ります」と話す。