韓国は、財閥企業を優遇し、競争力を高めることで経済を成長させてきた。経済成長を支えた財閥企業の同族経営は、一族の栄華を追求するあまり、環境変化に適応することの重要性に関心を向けなかった。韓進や錦湖の経営危機はその典型だ。経済を牛耳ってきた財閥企業の経営形態を根本から改めない限り、韓国が持続的な成長を目指すことは難しい。

 本来であれば、財閥企業の同族経営問題はかなり前に是正されるべきだった。しかし、韓国の政治家は自らの政治生命を守るために、同族経営を黙認してしまった。問題の先送りが続いてきた結果、手を付けることができないほど、同族経営のマイナス面が大きくなっている。韓国政府の財閥企業への対応を見ていると、“腫れ物に触るような”印象すら受ける。

 半導体の輸出という成長の原動力が弱まっていることを考えると、サムスンを筆頭に財閥企業の収益環境は一段と厳しさを増すだろう。それに伴い、韓国の所得や雇用不安も高まる可能性が高い。韓国世論は、政治・経済への不満をさらに募らせるだろう。

 追い打ちをかけるように、韓国を取り巻く外部環境が変化している。中国は韓国との関係を重視しなくなっている。米国は明らかに韓国と距離を取り始めた。米韓首脳会談の中で文大統領がトランプ大統領と“サシ”で話した時間は、約2分だった。文大統領は米国に北朝鮮への配慮を求めたかった。米国はそれを真っ向から遮った。これは、米国にとって韓国が国際秩序を乱す“困った国”と化しているからだ。

 韓国は、政治・経済・外交とあらゆる政策領域で、袋小路に入ってしまったように思う。国内経済や対日関係において世論が不満を募らせるだろう。他方、韓国政府は民間企業の成長を促進し、富の再分配機能を強化する策を持ち合わせていないように見える。北朝鮮の核開発活動が継続している中で、韓国国内の情勢不安が高まることは、世界の政治・経済にとって無視できないリスクと考えるべきだ。

(法政大学大学院教授 真壁昭夫)