韓国経済が構造不況に陥っています。サムスン電子や現代自動車の輸出競争力が削がれ、重厚長大企業がジリ貧になっているのです。八方ふさがりの韓国経済がトンネルから抜け出すための打開策を握っているのは、実は日本なのかもしれません。(本記事は週刊ダイヤモンド2015年10月31日号からの抜粋です)
2015年夏に、ある日系自動車メーカーのエンジニアが、ソウル近郊にあるサムスン電子の研究所を訪れていた。セキュリティチェックの厳しさで知られるこの研究所では、たとえ重要なビジネスパートナーであっても、パソコンやスマートフォンを一時的に没収されるのが常だ。
だが、この日はほぼノーチェックで関門を通過できた。VIP待遇で手厚くもてなされたようだ。
訪問の名目は、将来のエコカーに関する意見交換である。サムスン電子では、液晶テレビやスマートフォンといった家電市場に次ぐ柱として、車載市場を据えている。そのため、日系自動車メーカーの開発情報を喉から手が出るほど欲しいのだ。それだけではない。先方の様子からは、エコカー領域の技術者を探しているらしいことも見て取れたという。
サムスン電子と並び韓国産業界の双璧を成す現代自動車。ある社員は、「独フォルクスワーゲン(VW)のディーゼル不正問題が発覚するずっと前から、ベンチマーキングしているのはトヨタ自動車のエコカー戦略。日産自動車でもホンダでも駄目なんだ」と言い切る。「ナンバーワンはトヨタ。われわれは2番でもいい──」(同)。