新卒一括採用の廃止
新卒一括採用が通年採用になると、どのような課題が新たに生じるのでしょうか? Photo:PIXTA

「一括」「通年」の差より重要な“採用方式”

 経団連は22日、新卒学生の通年採用を拡大することで大学側と合意した。これは新卒学生の就職活動について、一括採用に偏った慣行の見直しである。現行の3月解禁などの画一的な就活スケジュールにかかわらず、卒業後も含めた多様な方式が普遍的になれば、外国人留学生や留学中の日本人学生などへのメリットは大きい。しかし、単に通年採用に変えれば、能力を重視した採用になり、年功序列の日本型雇用慣行が大きく変わるというのは、やや飛躍した論理である。

 これは「一括採用か、通年採用かの差」よりも、「人事部による採用か、部局別の専門分野ごとの採用か」の違いのほうが、はるかに重要なためである。現行の人事部が新卒者を一括採用し、定期的な人事ローテーションに合わせて各部局に新人を配置する方式を、採用時期を決めずに通年で行うことは困難である。他方で、部局別に独自に採用する方式は、元々、欠員や増員が生じるごとに通年ベースで行うのが一般的である。

 人事部による一括採用では、もっぱら配置転換を通じたOJT(業務上の訓練)の蓄積で、長期間に熟練を形成していく。できるだけ潜在的能力の高い人材を求めるため、偏差値の高い大学の卒業者が有利となる。また、平均的に離職リスクの高い女子学生は、たとえ能力が高くても一定比率にとどめることが必要と判断されやすい。

 これに対して各部局別の採用では、欧米の企業と同様に、各々の業務に必要なスキルや適性が主要な採用基準となる。単に「貴社で働きたい」のではなく、「貴社のこの具体的な仕事がしたい」という学生を求める面接では、付け焼刃の準備は役立たない。情報関連技術や、多文化に適応し語学に強い人材を確保したければ、出身大学や性別の差は重要ではなく、人事部採用でははねられる「尖った人材」も受け入れられやすい。学生も職種や働き場所を限定しない採用方式には不安を持っており、具体的な職種と結びついた部局別採用でミスマッチが防げれば、新卒者の離職率も低下する。

 もっとも、面接で自分がやりたい仕事を指定できる学生がどれほどいるのかという批判もあろう。しかし、それは人事部の一括採用で、入社後に配置先を一方的に決められる従来の方式とは鶏と卵の関係にある。仮に、部局別採用が定着すれば、学生側もそれに対応した専門的能力を、ある程度身につけてからの就活が有利となる。現行の就活時期の早期化は、企業側が学生に具体的な職業能力を求めていない人事部一括採用から生じている面も大きい。