新紙幣発表の会見4月9日、新しい1万円札、5000円札、1000円札のデザインがお目見えした Photo:JIJI

 財務省は2024年上期をめどに新しい1万円札、5000円札、1000円札の発行を開始すると発表した。「政府はキャッシュレス化を進めているのに、なぜあえて逆行するようなことをするのか?」と疑問を感じた人もいただろう。

 しかしながら、ユーロ圏や英国、スイス、オーストラリアなどのように、新紙幣を最近発行したり、これから発行したりする国は世界的に多数見られる。主な目的はいずれも偽造防止にある。

 キャッシュレス化が世界で最も進んでいる国はスウェーデンだろう。同国の市中現金流通高の名目国内総生産(GDP)比は昨年末で1.3%しかない(日本は21%弱)。それでも同国の中央銀行は15~16年に偽造対策のために新紙幣を登場させた。

 政府・中銀が近い時期に現金を完全廃止するならば、新札発行は必要なくなる。しかし、スウェーデンのような国であっても完全キャッシュレス化は容易ではない。

 同国の年金受給者団体は最近、現金を拒絶する商店や飲食店が増加していることに懸念を表明している。同国で公衆トイレを使うには10クローナが必要だが、近年はそこでも現金が使えなくなっている。デジタル技術に慣れない高齢者にとっては、社会が排他的になってきたと感じられるようだ。