新紙幣発表の会見をする麻生財務相写真:毎日新聞社/アフロ

渋沢栄一に津田梅子
日本に新紙幣は必要か

 1万円札の肖像を渋沢栄一とする新紙幣発行のニュースが、話題になっています。私の生まれた当時は1万円札は聖徳太子、それがやがて福沢諭吉に変わり、同じ福沢諭吉の肖像でさらに新紙幣が発行されました。平均して約20年に一度のペースで、日本の紙幣は新しい紙幣に切り替わっているわけです。

 ただ、今回の新紙幣は特別なものになるかもしれません。おそらく日本人が日常的に使用する最後の紙幣になるのではないか――。そんな予測を私は立てているからです。

 紙幣がこれから先、もう発行されなくなるというのはかなり突拍子もない予測に思えるかもしれません。実際に、そのようなことを試している先進国も見かけません。ただ、2024年度から使用される予定の今回の新紙幣が、仮にそれから20年後の2044年頃まで使用されることが想定されているとしたら、それ以降の世界にさらに新しい紙幣が必要なのかどうか、私はわからないと思います。

 紙幣がなくなるという予測には、実は2つの別々の要素が存在します。それは、高額紙幣が必要なくなることと、少額紙幣が必要なくなることです。

 まず、高額紙幣が必要なくなることを考えてみましょう。日本人の観光旅行客がよく持っているのにアメリカ人がほとんど持っていないものに、「100ドル紙幣」があります。成田空港や都心のメガバンクで米ドルを手に入れようとすると、両替パックに当たり前のように入っているのがこの100ドル紙幣ですが、アメリカで暮らしているとそれを見かけることはほとんどありません。

 実際、銀行でお金を引き出す際にATMから出てくる紙幣は、たいていが20ドル紙幣です。たぶん、日本人だからそうだったのだと思いますが、私はアメリカで暮らしていたときも財布の中に3万円くらいのお金が入っていないと不安になるたちでした。そうすると、日本なら1万円紙幣が3枚入っていればいいのですが、アメリカだと20ドル紙幣が15枚。財布がとても分厚くなってしまいます。