議員自身も最初は、能力も高く、そつなく業務をこなす桐谷さんをありがたく思っていたようですが、地元秘書の不満につられたのか、やがて彼女を苦々しく思うようになっていきます。桐谷さんは一流国立大学を卒業し、そのまま大学院に進んだ才媛でしたが、その議員の学歴は彼女よりも低く、地方議員からのたたき上げです。知識や文章力、説明能力など知的な領域では、若い桐谷さんのほうが明らかに上で、後援会幹部からも「優秀な政策担当秘書がいて、あんたも安心じゃ」などと言われたりします。

 やがて、議員に“100%オレに従え”的な態度が増え、桐谷さんを服従させるような言葉や行動がエスカレートしていきます。そして、逆らえないのをいいことにセクハラまでされるようになりました。それも最初は言葉だけでしたが、密室で身体のマッサージなどを要求されたり、どさくさに紛れて胸などを触られたりするようになります。そして、「政策つくるよりも、こっちの方が向いてるんじゃないか(笑)」などと言われるようになります。

 毎日がつらくなった桐谷さんは、議員から距離を置き、なにかと理由をつけて物理的にも近づかないようにしていると、あるとき第一秘書への降格を告げられました。理由は、事務所に貢献している地元秘書が研修を受け政策担当秘書の資格を取ったので、彼こそトップにふさわしいというものでした。

 結局、桐谷さんは議員からのハラスメントに耐えられず、他の議員の事務所に転職することになり、現在に至っています。

議員の心理背景

 ケース1と2の国会議員には、どのような心理メカニズムが働いていたのでしょうか。両者とも、自己愛性パーソナリティ障害のような特徴が認められます。この障害がある人は、 “特別な自分”は注目・称賛されるべきであり、特別な計らいがあって当然だという特権意識を持っています。対人関係においては、他人への共感力に欠如しており、常に“勝ち負け”などで判断します。

 そのため、格下だと思う相手が自分よりも目立ったり、活躍したりすると激しく嫉妬し、露骨に怒鳴ったり、暴力をふるうことさえあります。このように自己中心的になるのは、等身大の自分自身を愛せないという“病理的な自己愛”を根幹に持っているからです。

会社の上司にも応用できる3つの対処法

 国会議員事務所の場合、実質的な雇用主は議員となるため、物申すのであればクビを覚悟しなければなりません。先のインタビューでは、議員の考え方次第で秘書の仕事内容なども変わってしまい、すぐに失職する可能性もあるため、気を使う存在であることが繰り返し語られていました。議員事務所を含む小規模事業場では、経営者の考え方が現場に直接的な影響を及ぼすことが、先行研究でも指摘されています。