だが、戦後は遠くなりにけり。いまや団地に往時の輝きはない。

憧れだった団地は
社会問題が噴出する最先端の課題先取り空間

 住民たちの高齢化が進み、ひとりまたひとりと櫛の歯が抜けるように減って行く。入れ替わりに入居してきたのは外国人だ。人々の憧れだった団地は、いまや孤独死や異文化摩擦、ヘイトといった数々の社会問題が噴出する最先端の課題先取り空間となっている。

『団地と移民』は、長年にわたり排外主義の問題を追いかけてきた著者が、日本各地やパリ郊外の団地の最前線で起きていることをルポした一冊だ。かつては「夢と希望の地」だった団地がここまで様変わりしているとは、正直この本を読むまで想像していなかった。

 まず問題となっているのが住民の著しい高齢化である。いまや団地は「都会の限界集落」の様相を呈している。独居老人が増え、孤独死も珍しくない。本書が取り上げている千葉県松戸市の常盤平団地では、死後3年もたって発見されたケースがあるという。家賃が自動引き落としされていたために、預金が底をつくまで誰も異常に気がつかなかったのだ。

 孤独死をする人は「ないないづくし」のタイプが多いという。仲間がいない、隣近所と関わり合いがない、地域の行事に参加しない、他人に関心を持たない、あいさつしない……。この「ないない」を「あるある」に変えるだけでも、死に方が随分違ってくるらしい。常盤平団地では、住民が「孤独死ゼロ研究会」というNPOを立ち上げ、孤独死を防ぐ取り組みを始めた。この取り組みは注目を集め、全国各地からはもちろん、日本と同様に少子高齢化の問題を抱える韓国や中国からも、視察に訪れる人が後を絶たないという。

 もうひとつ、団地をめぐり大きな問題となっているのが、外国人との共生だ。

 埼玉県川口市の芝園団地は、全2500世帯という大型団地だが、半数の世帯は外国人で、その大半はニューカマーの中国人だという。中国人住民が急増したことで、この団地は排外主義を掲げる集団の標的となった。