昭和時代より食の流行現象を観察してきたフードジャーナリスト・畑中三応子さんは、純粋に味を楽しむだけでなく、服や音楽のようなポップカルチャーとして消費される食べ物を、「ファッションフード」と名付けている。とくにファッションフードの変動が顕著だった平成時代、その30年間を振り返る。(フリーエディター 小林由佳)
「ティラミス」は平成のファッションフード最大のヒット
平成時代初期、バブル景気とともに巷を賑わせたのは、イタめしブームだ。
「当時のイタリアンはフレンチと同等の高級料理店という位置付けでしたが、 “イタめし”という絶妙なネーミングで一気に親近感を抱かせる存在になりました。70年代にもピザやスパゲティのブームはありましたが、当時のピザはアメリカンピザで、スパゲティは和風にアレンジしたものが主流。平成のイタめしブームはこれと一線を画し、ピザは“ピッツァ”、スパゲティは“パスタ”と呼ばれ、イタめしを食べに行くこと=お洒落でした」(畑中さん)