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インキュベーションの虚と実

なぜスゴそうな人も大ゴケするのか?
テーマで間違うスタートアップ

本荘修二 [新事業コンサルタント]
【第5回】 2012年6月18日
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 起業家が分かっていないことは、自分のことや自分の取り組むテーマについてだけではない。起業家は顧客やユーザーのことも、意外なほど分かっていない。

 最近話題になったTechCrunch記事「AnyPerkはどうやってできたのか―日本人初のY Combinator卒業生の半年間(後編)」は、ユーザーを理解せず開発したmiepleを捨て、ニーズに確信があるAnyPerkへ事業転換した事例が紹介されている。ORがいかに大切かが分かる話だ。

 余談だが、秋元康氏は、ファミレスでファンの意見を聴くなどしてAKB48の形をつくっていったという。クリエイティブな産業である芸能分野でも、顧客の声を聴いて商品開発する時代なのだ。

 もっとも、「ユーザーの声を聴け」といっても、そのまま受け取ってはいけない。ユーザーは新しいプロダクトについて教えてくれはしない。ユーザーの声や反応を知ることで、カスタマー・インサイトを得るのだ。

 なお、シリコンバレーを拠点とするデザインコンサルティング会社、IDEOはユーザー観察からデザインのヒントを引き出すことで知られているが、カスタマー・インサイトを得るためにエスノグラフィー(参考:筆者ブログ )が米国企業で多用されている。アップルのiPodなどの例もあるが、プロダクト開発にユーザー観察を役立てるのは当たり前になっている。

 適切にユーザー観察やユーザーの声を聴くには、ターゲットとするユーザー、そして何を提供するか、仮説をより明確にする必要がある。こういう作業を経て、アイデアは、より現実的なビジネス・コンセプトへと練り上げられていく。

カン違いリーン・スタートアップでゾンビ化
「お前はすでに死んでいる」

 本連載でも過去に紹介した「リーン・スタートアップ」だが、書籍が出る前から話題となり、そこで紹介されているピボット(Pivot=方向転換)という言葉が大流行りだ。YouTubeもPayPalもInstagramも、日本のミクシイもグリーもピボットした後に成功に至った。しかし、そのためか、とにかくやってみようということをよしとする機運が見られる。

 「ゾンビ化してるスタートアップがかなりあります」

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本荘修二

新事業を中心に、日米の大企業・ベンチャー・投資家等のアドバイザーを務める。多摩大学(MBA)客員教授。Net Service Ventures、500 Startups、Founder Institute、始動Next Innovator、福岡県他の起業家メンター。BCG東京、米CSC、CSK/セガ・グループ大川会長付、投資育成会社General Atlantic日本代表などを経て、現在に至る。「エコシステム・マーケティング」など著書多数。訳書に『ザッポス伝説』(ダイヤモンド社))、連載に「インキュベーションの虚と実」「垣根を超える力」などがある。


インキュベーションの虚と実

今、アメリカでは“スタートアップ”と呼ばれる、ベンチャー企業が次々と生まれている。なぜなら、そうした勢いある起業家たちを育てる土壌が整っており、インキュベーターも多く、なにより、チャレンジを支援する仕組みが存在するからだ。一方の日本はどうなのだろうか。日米のベンチャー界の環境の変化や最新のトレンドについて、25年にわたってベンチャー界に身を置いてきた本荘修二氏が解説する。また日本でベンチャーが育ちにくいと言われる背景を明らかにし、改善するための処方箋も提示する。

「インキュベーションの虚と実」

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