サイバーエージェント創業者の藤田晋氏サイバーエージェント創業者の藤田晋氏。2025年12月12日付で社長を退いて会長に就任した Photo by Shogo Murakami

「夜の会食も仕事のうち」とはよく言われるが、その目的を「商談をまとめること」や「情報を引き出すこと」だと勘違いしているビジネスパーソンは多い。サイバーエージェントの藤田晋会長は、こうした「企みのある会食」だと「本当に気を遣う。そういう会食はやらない」と言う。では、どういった気持ちで会食に臨むべきなのか。アマゾンの「リーダーシップ」「ビジネス実用」カテゴリーで1位に輝いている『勝負眼 「押し引き」を見極める思考と技術』(文藝春秋、2025年11月30日刊行)の著者でもある藤田氏に、会食ですべきこと、してはいけないことについて聞いた。(取材・構成/イトモス研究所所長 小倉健一)

提案内容で勝負しようとしても
会食やゴルフで関係性を築いている人は強い

――そもそも取引先と会食をすることにはどんなメリットがあるのでしょうか。

藤田晋(以下、藤田) 相手の会社に何度も足を運んで提案しても、競合相手が食事やゴルフで接待をしていたら、いざ取引の段階で負けてしまうことはよくあることです。

 いくら仕事だけで勝負しようとコンペで良い提案をしたとしても、その内容を仲のいい競合にこっそり見せて、「このレベルまで提案の質を上げて」と話をつけられたら、結局は仲の良い競合に発注されてしまう。実力だけでなく、普段の関係性というのは仕事にも大きく影響するものです。

 業種にもよると思いますが、会食をする文化がある業界では、会食をしないと競合に負けてしまう、という側面はあると思います。

――ビジネスの場においては合理的に判断したほうがメリットが大きいはずなのに、結局は好き嫌いや会食の有無が影響するのはなぜなのでしょうか。

藤田 合理を突き詰めていくと、結局は一緒にごはんを食べたり、子どもの就職の世話をしたりするような関係を築ける相手との間で、勝ち負けが決まってしまう。そうなると、会食をしないことのほうが、かえって「非合理」になってしまう。

 新型コロナウイルスが流行っていた頃は、会食ができなくなりましたよね。みんながやらないならそれで良かったのですが、コロナ禍が収束したら、またみんな会食をするようになった。そうなると、会食をしないと負けてしまいます。

 正々堂々と提案内容だけで勝負をしていないと文句を言っても、やはりビジネスの相手と会食やゴルフに行って関係性を築いている人は、強いですよね。