もちろん地域性の違いは、普通に旅行をするだけでもなんとなくわかるだろう。しかし著者のような居酒屋の見方や感じ方を会得できたら、楽しみは倍加する。さらに居酒屋は、ひとり時間の豊かな過ごし方を学ぶ、最高の場所ではないか。要約者はそんな思いを抱いた。居酒屋の名店に足を運んでみたい人、ひとり飲みのたのしみを極めたい人にうってつけの一冊だ。(三浦健一郎)

本書の要点

(1)東京の名居酒屋と呼ばれる店は、「老舗の伝統」が特徴の第一世代、「酒も料理も楽しめる良さ」が特徴の第二世代、そして「自分に合った個性」が特徴の第三世代に分けられる。
(2)大阪では元々、「居酒屋は安くてナンボ」であったが、酒販店「山中酒の店」の主導で、名居酒屋が次々に誕生し、発展していった。
(3)日本全国の「居酒屋を巡る旅」は、一人で一ヶ所に二泊するのが理想的だ。初めて訪ねる旅先では、昼間のうちに町を下見して、夜に入る居酒屋の見当をつけるとよい。

要約本文

◆東京・大阪、居酒屋の系譜
◇東京の居酒屋三世代

 本書は、居酒屋にふらりと立ち寄り、そこでの体験を味わい尽くせるよう、著者が日本中の居酒屋をめぐってきた経験を紹介した一冊だ。

 いつもの駅の一つ手前で降りてみる。珍しく銀座にいるのだから、銀座の居酒屋へ行ってみる。あるいは出張先でその土地の居酒屋へ。こうして居酒屋好きが高じると、次は「居酒屋を求めて旅に出る」という大目標ができる。

 注目したいのは、日本の中心都市である東京と大阪の、いわゆる名店と呼ばれる居酒屋の系譜である。

 まずは東京だ。東京の居酒屋の第一世代は、その業態ができた明治初期から、戦後間もない頃あたりまでに創業した店であり、「老舗の伝統」を特徴とする。わかりやすいのは、定評のある酒を燗で飲むこと、お燗の世話をする「お燗番」がいること、席がカウンターになっていることだ。創業明治の「大はし」「みますや」などがその代表例である。