参考までに5月19日に配信された記事3本のタイトルを載せておく。

 《被害者のフリをするパフォーマンスは拙劣極まりない》
 《言動の不一致と前後矛盾:米国式いじめの信用汚点》
 《すぐに顔を変えてしまう米国は非常に世間体が悪い》

 これらのタイトルにも露呈されているように、中国共産党として、もはやトランプ政権を信用していないように見える。ただ米国との通商協議をまとめ、国内外の市場や世論に自信と安心を再び提供することを目的としてきた党・政府としては、少なくとも現時点ではそれが実現せず、交渉が失敗に終わった“全責任”を米国側になすりつけ、自らは被害者を演じるしかないという事情があるのだろう。さもないと、対外関係、経済情勢という中国人民の生活にとって死活的に重要な分野で党指導部は交渉と解決に失敗したと自国民からみなされ、党の正統性に傷がつくことになる。

 企業家、労働者、消費者などは党・政府の手腕や能力に疑問符をつけることになる。共産党内で現指導部に不満や反発を持つ勢力や人物は逆に現状をチャンスだとみなし、習近平共産党総書記やその周辺に圧力をかけるべく乗り出してくるかもしれない。いずれにせよ、習近平政権の権威性や求心力が揺らぎ、政権運営が不安定化する統治リスクに見舞われているというのが現状だと解釈できる。

劉鶴副総理がメディアに
語った“不一致な部分”

 米国が追加課税を正式発表する直前、米中通商交渉の総責任者である劉鶴・国務院副総理・政治局委員(中国共産党トップ25)が自ら米国へ赴き、米国側と交渉を行っていた。より具体的に言えば、米国側が追加課税を正式発表し、中国側として面目や国益を失う事態を何とか避けるために最後の努力をすべく奔走していた。

 ワシントン到着直後、劉副総理は待ち受けていた中国中央電視台(CCTV)の駐在記者に対して、「私は今回誠意を持ってここに来た」と言った。ただ同時に「私は圧力を堪えながらここにいるのだ」と語った。

 特筆すべき点として、普段は表舞台に出てきてもメディアの取材に面と向かって答えることがまれであるのが中国の国家指導者であるが、今回の対米交渉終了後、劉副総理は中国メディアの取材に応じた。筆者から見て、国内、米国、市場、世論など多方面から圧力を受ける劉副総理の表情には、絶やさない笑みのなかに疲労感が際立っていたが、いま答えられる最大限の内容を、中国の国家指導者にしては率直に、アドリブを交えながら回答していたように思う。