ZOZOの前澤友作社長バイトの賃金を1300円に引き上げたZOZOに対して、「正社員を増やさないのか」との批判の声が出ている。しかし、日本の正社員は決して安泰ではなく、むしろ低賃金の温床である Photo:JIJI

ZOZOがバイトの時給を1300円に引き上げて話題となっている。「正社員を増やさないのか」という批判の声も上がっているが、日本の正社員は社畜の集まりでもある。歴史をひも解けば、なぜ正社員=社畜なのか、その原点が垣間見える。(ノンフィクションライター 窪田順生)

ZOZOの時給1300円バイトに
応募が殺到した

「日本には労働者がいない!今すぐに外国人労働者をジャンジャン迎え入れなくては滅びるぞ!」という話が、ノストラダムスの大予言を彷彿とさせる「大ウソ」だということを、これ以上ないほどわかりやすく世に示した出来事が先日あった。

「ZOZOTOWN」を運営するZOZOが、物流倉庫で商品の荷受け・検品などを行うバイト従業員の時給を1000円から1300円へと大幅に引き上げたところ、2000人の枠に応募が殺到して、あっという間に締め切りになったのである。

 いない、足りないと騒いでいるのは、雇用主が安い賃金でコキ使える「低賃金労働者」であって、それなりの賃金をもらえるのなら働きたいという労働者は山ほどいる。世間で騒がれている「人手不足」というのは、実は「賃上げ」でかなり解消できる問題なのだ。

 もちろん、賃上げをしても人が集まらないという分野には、外国人労働者の受け入れも考えなくてはいけない。が、賃上げをしないで外国人労働者を受け入れたところで、遅かれ早かれ労務トラブルに発展してしまう。「賃上げなき移民政策」は、現在日本が抱える「ブラック企業」などの問題を、ワールドワイドに広めてしまうだけなのだ。

 この構造的問題をわかりやすく知らしめたという意味では、今回のZOZOの「時給1300円」は労働者的にも、日本社会的にも非常に意義があった、と個人的には評価しているのだが、SNS上では180度真逆の意見も少なくない。

 時給を上げても年収にすれば200万円程度で、こんな低すぎては生活ができない。いつでもクビ切りができる要員を増やしただけだ、などなど否定的な声が出ているというのだ。

 もちろん、世の中、いろいろな考え方があるのは当然なので、勉強になるなとそれらを報じた記事を見ていたのだが、その批判の中に、思わず考え込んでしまうような非常に興味深い主張があった。

 それは、「正社員の募集もしないのか」という批判である。