AI時代は「問いを立てる力」が大事だという人が知らない、「仕事がデキる人」に不可欠な力とは?写真はイメージです Photo:PIXTA

誰でも一度は「これからの時代はいかに問いを立てるかが重要」という言説を耳にしたことがあるだろう。近年AIの普及とともに急速に広まった言い方だが、果たして本当にそうなのか。問いを立てるとはどういうことなのかを詳しく分析し、人間にしかできないこととは何なのかを解説する。(プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役 秋山 進、構成/ライター 奥田由意)

なぜ今、「問いを立てる力」が注目されるのか

 ここ数年、ビジネスの世界では「問いを立てる力が重要だ」とあちこちで言われるようになってきた。戦略構築、組織変革、人材育成……どのテーマでも必ずと言っていいほどこういう言い方がなされる。セミナーで語られ、研修プログラムに組み込まれ、マネジャー向けの書籍のタイトルになる。

 なぜ今、「問いを立てる力」が注目されているのだろうか。答えは明快だ。AIが「答えを出すこと」を急速に自動化し始めたからである。

 少し前まで、ビジネスパーソンの知的な価値の大きな部分は情報を集め、分析し、答えを導き出し、説得力ある形でプレゼンすることにあった。膨大なデータを読み込み、市場を調査し、競合を分析し、提言をまとめる、こうした作業が“優秀な人材”の専売特許だった。

 ところが生成AIは、この領域を急速に侵食してきた。情報収集、要約、分析、仮説生成、レポート作成など、かつて数日かかった作業が、数分で実用に足るクオリティで出力される。

 こうした状況の中で、いやおうなく、人間ならではの価値はどこにあるかという問いが浮上してきた。そこで脚光を浴びたのが「問いを立てること」だったのである。AIは答えを出せるかもしれない。しかし、何を問うべきかを決めるのは人間だ。こういう論法だ。

 この主張には一定の説得力がある。しかし、本当にそうなのか。「問いを立てること」はそれほど人間固有の能力なのか。ここをきちんと解きほぐさないと、この言葉はいつまでも美しいスローガンのままで終わってしまう。