英国が欧州連合(EU)離脱に向けた対応でつまずく中、EUにとってより深刻な混乱をもたらしかねない状況が生まれつつある。他のEU懐疑派が域内にとどまりながらEUと戦う構えを見せているのだ。

 EUの諸機関内でのこうした政党の台頭は今週の欧州議会選挙で確認されるだろう。議会選の結果は、欧州政治の既成勢力が反乱勢力との共存の道を探らざるを得ない時代の幕開けを告げることになりそうだ。

 「過激主義者とは、ブリュッセルで欧州を20年間支配してきた人々のことだ」。イタリアの極右政党「同盟」のマッテオ・サルビーニ党首は18日、ミラノ中心部のドゥオモ広場で大勢の聴衆を前にこう述べた。「われわれは過去しか見ていない官僚抜きで未来をつくりたい」と語り、EUの変革を約束した。

 サルビーニ氏は最近、イタリアの内相として、地中海で難民の救助に当たるEU艦船の行動を骨抜きにすることで、自らの移民排斥の姿勢を強く打ち出した。EUの当局者らは、この出来事が共通政策を損なう前例となることを恐れている。

 内部から抵抗するというEU懐疑派の戦略には、ブレグジット方式の実験はしないことを示すことで、リスクを避けがちな欧州の有権者を安心させると同時に、EUの方向性に不満を持つ人々にアピールする狙いがある。

 EUにとっては、統合の深化に向けたいかなる動きも、EU機関内およびローマ・ブダペスト・ワルシャワなどにある加盟国政府から強硬な抵抗に遭うことを意味する。共通の政策で合意したり一部の既存規則を維持したりすることが一層困難になりかねない。

 こうした衝突は欧州大陸における政治的な分裂現象の一部であり、急速に変化する米中主導の世界で欧州が適切な対応を取るのを妨げる恐れがある。

 アムステルダム自由大学の政治学者キャサリン・デフリース氏は「EUは今後かなりの間、行き詰まり状態になるだろう。EU予算やユーロ圏の改革、気候変動について大きく前進することは難しくなる」と述べる。

 欧州の統合は、かつては何十年にもわたりエリートによる政治プロジェクトであり続け、党派を超えた幅広い同意を得ていたため、選挙の争点になるほど有権者の関心を高めることはまれだった。だが欧州が経済や難民を巡るさまざまな危機に直面した10年間で状況が変わった。EUを有益とみなすか、少なくともEUがない欧州よりは好ましいと考える有権者と、EUが各国の問題の原因になっていると批判する有権者とに二分されてきたのだ。

 とはいえ今週の欧州議会選では、英国以外の約4億5000万人のEU市民の中でブレグジットへの追随を望む人はほとんどいないことが示されるだろう。これは膠着(こうちゃく)状態のブレグジットの主要な「遺産」といえる。このため既成政治に反対する政党は、新たな形でのEU懐疑主義を生み出さざるを得なくなった。EU加盟国としてとどまりながら、EUを支配するエリートやその主要政策の一部を攻撃するという路線である。

 仏極右政党「国民連合」のマリーヌ・ルペン党首は23~26日に行われる欧州議会選前の遊説で、「われわれは今、欧州を内部から徹底的に変革する機会を手にしている」と述べた。

 親EU派の既成政党は、定員751議席の欧州議会で明らかな過半数を維持しつつも議席数を減らすと予想されている。かつてEU加盟諸国において優勢を占め、欧州規模の「欧州人民党(EPP)」などを形成していた中道右派と中道左派の各党は勢いを失い、親EU派のリベラル政党や新興のグリーン政党のほか、右派や左派の反既成政党グループに票を奪われつつある。

 世論調査会社のカンターの予測によれば、選挙後の欧州議会ではEU懐疑派の政党が最大3分の1の議席を占める可能性がある。この結果、中道派グループは3党か4党で連合を形成することを余儀なくされ、EUの複雑な意思決定過程がさらに混乱する恐れがある。

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