条件によるマッチングから
「ビジョン」によるマッチングへ

 その後FullDepthでは、ロボット設計ができる社員を迎えたことで製品開発のスピードを加速させ、約1年という短期間で試作機を完成させることができた。現在大阪さんは、水中ドローン「DiveUnit300」開発の中核メンバーとなり、今後はDiveUnit300の部分的な改修作業や量産化にも関わっていく予定だ。

「ロボットの一部だけではなく全体の設計を行いたいという希望が、この開発に携われたことで、ようやくかないました」(大阪さん)

「ビジョンを語れない企業は他社に勝つことができなくなる」と指摘する嶋﨑真太郎氏嶋崎真太郎氏「ビジョンを語れない企業は他社に勝つことができなくなる」と指摘する Photo:Y.K.

  嶋崎氏は、本ケースの成功要因をビジョン重視のマッチングにあったと振り返り、従来型の採用手法に警鐘を鳴らす。

「職種の専門性が高度であればあるほど、希望通りのマッチングを実現するには条件や技術の一致以上に“ビジョン”を一致させることが重要になります。つまり企業も求職者も、仕事を通じてどのような社会課題に取り組みたいのか、どんな未来をつくっていきたいのかを開示していく必要があるということ。

特に日本の企業の多くは業務や役割が縦割りされていることもあり、自身の業務の前後の工程が見えづらい。高度専門技術者たちの退職理由にも『自分の技術や仕事が世の中に還元されているのかが分からない』という意見が一定数あります。

 当社も2018年に、実現したい社会や社会課題でつながるスカウトサービス『SCOPE』をスタートさせ、高度専門職におけるイノベーション人材獲得を支援していますが、今後さらに産業の枠を超えて高度専門人材の争奪戦が激化する中、ビジョンを語れない企業は他社に勝つことができなくなっていくでしょう」(嶋崎氏)

 人材の流出を防ぎ、日本企業がイノベーションを起こしていくためには、これまでのような条件重視の採用の見直しを急ぐ必要がありそうだ。

◎嶋崎真太郎(しまざき・しんたろう)
アスタミューゼ株式会社 役員兼事業開発部部長。大手人材企業を経て、Web系ベンチャー・人材系ベンチャーの役員を歴任し、事業企画、営業企画、人事・採用企画に携わる。2017年に同社アスタミューゼへ参画。執行役員として人材投資事業を統括する。