【バロンズ】MMTで投資家が知るべきことPhoto:PIXTA

現代貨幣理論をめぐる誤解

 政府が失業を永久になくすと同時に、インフレ率を抑制することができると想像してみてほしい。政府はそれを実現する力があるのに、無知や悪意ゆえに実行を拒んでいる。これが現代貨幣理論(MMT)の中心的な主張である。MMTは政治経済学の学説の一つとして、特に民主党左派で勢いを強めている。MMTの見解は、環境対策法案「グリーン・ニューディール」と、働きたい人全ての雇用機会を連邦政府に提供させるという提案の両方に大きな影響を与えた。これに対し、5人の共和党上院議員は、「米国経済の安全性を危険にさらしている」としてMMTを批判する決議案を提案した。

 これらの上院議員は、紙幣を印刷すれば全ての問題を解決できるという戯画化されたMMT像に反応している。彼らより知識があってしかるべき人物も、同じ誤りを犯している。ニューヨーク連銀の前総裁であるウィリアム・ダドリー氏は、MMTのような政策が、ワイマール共和国時代のドイツ、ジンバブエ、ベネズエラのハイパーインフレの原因だと述べた。元財務長官のローレンス・サマーズ氏は、MMTについて「ばかばかしい」、「重層的な誤りがある」と評し、「大災害をもたらす」と指摘した。

 こうした批判は的を射ていない。実際には、MMTは従来の経済学上の定説に基づいており、その主張はイデオロギー的でも党派的でもない。5月、共和党のマルコ・ルビオ上院議員は米国経済の状況に関する詳細な報告書を発表したが、この報告書ではMMTに関連する論文や書籍を繰り返し引用している。サマーズ氏は、MMTを痛烈に批判しているにもかかわらず、MMT支持者と同一の政策の処方箋を近年に数多く提案している。しかも、提案の理由もおおむね同じである。