そして、最後に派遣で入った会社でパワハラに遭い、暴言を浴びた翌日から出社できなくなって、引きこもり状態に陥った。家族からも周囲からも「仕事はいくらでもある」「仕事をしろ」などと責められた。

「自分としても、もちろん仕事をしたかった。しかし、どうしても行動に結びつけられないほど、心理的ハードルのほうが高かったんです」

 履歴書を書いて応募しようにも、引きこもっていた間の空白をどう埋めればいいのかわからなかった。この仕事ならできそうかなと思って電話しても、担当者から『ちょっと難しいですね』と断られた。

「応募して断られるたびに、『あなたのスキル不足ですよ』と言われている気がして。それが何回も続くたびに、正社員時代の技術職の自負があるだけに、自信の喪失が積み重なっていきました」

働くって何なのか――
世の中はどんどん生きづらくなる

 働くって何なのか。Aさんは、「就労」の目的が生活していくことには繋がらないように感じているという。

 公的機関に相談に行っても、年齢で区切られたり、ミスマッチな支援しかしてもらえなかったりと、疎外感を抱くことが多かった。

「働くことというのは、世の中に貢献できるとか、自分がこの社会に生きていることを確認するための手段なのかなって、思うんです」

 事件と「ひきこもり」を結びつける報道があるたびに、過度の差別や偏見が当事者を抱える家庭を追い込み、外につながる機会を遠ざけていく現実がある。

「最近、世の中が生きづらく、ギスギスした空気が増えた感じがする。電車に乗るのが怖い。今回の事件やネットの騒動を見ていても、他者に不寛容な世の中になっているのではないか」

 男性が、このように皆の前に出て発言するのも初めてのことだという。