ドナルド・トランプ米大統領の通商政策は多くのエコノミストの批判を浴びているが、良い点もある。それは市場のアニマルスピリッツ(将来の利益を見越した強い投資意欲)を抑制することだ。この投資意欲は、放っておけば悲惨な結末を招く行き過ぎたブームにつながりかねないものだ。投資家の目には、新たな関税による不透明感という明らかに極めて悪いニュースと映るものを、ある種の良いニュースと受け止めるのは変に思えるかもしれない。関税は経済と企業利益にとって明らかに悪いニュースだが、市場が根拠の薄い興奮状態に陥るのを回避することで、持続不可能なブームを防ぐという好ましい作用を及ぼすかもしれない。先週、トランプ米大統領がメキシコに追加関税の脅しをかけたことは、重要な通商関係を壊す動きと受け止められ、投資家らは安全資産に逃げ込んだ。金、米国債、スイスフランなどの安全資産の相場は軒並み上昇した。そして株価は、後に持ち直したものの、一時3カ月ぶりの安値を付けた。その後、トランプ氏がメキシコへの追加関税を棚上げしたことを受け、10日には安全資産は売り戻され、株価は急上昇した。
トランプ氏の関税の脅し、投資には好影響も
世界貿易の不透明感、過剰な投資意欲の抑制に好ましい作用か
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