「一方通行のコミュニケーション」
だからこそ素直に届く思いもある

 OQTA HATOの発売以来、高橋さんのもとにはユーザーから続々と体験談が寄せられている。

「親との関係が円滑になったと、よく感謝されます。『親孝行したいときには親はなし、さりとて、墓石に布団は着せられず』という江戸時代の川柳があります。墓石の前では素直に親を思える。これは言葉ではなく“思い”を、それも一方通行で届けるから。OQTA HATOも同じ構造なんです。まさしくOQTA HATOは『墓参りのUX』なんです。これを言うと、周りからは縁起が悪いと止められもしましたが(笑)、やはり墓参りに例えるのが一番わかりやすい。僕の兄なんて、母が死んでも鳩を鳴らし続けると言っています」

 OQTA HATOは、いわば親が生きているうちにできる墓参り体験だといえるのだろう。実際に鳩の鳴き声を聞く親にも、変化が表れるらしい。高橋さんの母親は鳩が鳴った日を記録するために、日記をつけるようになったという。

「70歳を超えた母が新しいことに挑戦し、習慣化する。OQTA HATOは何だか不思議な力を秘めているとは感じていましたが、具体的な言葉にはできずに、モヤモヤしていました。あるとき、渋谷ロフトでOQTA HATOの販売をしていると、説明を聞いた男性が『ああ、これは社会疫学ですね』と口にしたんです。次の瞬間、販売員の僕が『え、それは何ですか?』と逆に彼を質問攻めにしていました」

 社会疫学とは、食事や運動だけではなく、社会との関係、人とのつながりが健康に大きく影響をすることを明らかにした比較的新しい学問だ。少子高齢化社会を迎えた日本では、健康寿命を延ばすために、人とのつながりを社会でどう維持していくのかが大きな課題となっている。

「昨年9月から、福岡県大牟田市と協力し、OQTA HATOを使った認知症ケアの実証実験をしています。親の認知症が進行すると、意思疎通ができずにコミュニケーションが苦痛になることもある。OQTA HATOは言葉を介さないから、ストレスのないコミュニケーションが可能なんです。離れて暮らす家族のつながりを維持し、認知症ケアにも効果を発揮できると期待しています」

 何でも過剰になりがちな時代に、「これだけの機能があればいい」、を形にしてくれたOQTA HATO 。鳩が飛び出し『ぽっぽ~』と鳴くことで、誰かの“思い”を、鳩が一生懸命に届けてくれる。少し不器用な製品だからこそ、笑みがこぼれる。