ペロシ議長が弾劾に踏み切ろうとしない理由と大統領の弾劾手続きについて、もう少し詳しく説明しよう。

 米国の憲法には、「反逆罪、収賄罪、その他重大な罪、または軽罪」をおかした大統領を弾劾できる規定がある。下院議員の過半数の賛成で弾劾訴追され、上院で開かれる弾劾裁判で3分の2以上の賛成があれば、大統領は罷免される。

 民主党は現在、下院で235議席(定数435)と過半数を握っているので、弾劾訴追案は可決できるが、問題は上院で47議席(定数100)しかないことだ。上院の弾劾裁判で大統領を有罪にするためには67票の賛成が必要であり、20人の共和党議員が賛成に回らなければならない。

 トランプ大統領の支持率は40%台前半と歴代大統領と比べてかなり低いが、共和党員だけに限れば90%近い支持率を維持しているので、共和党の上院議員が弾劾賛成に回る可能性は低い。だから、ペロシ議長は「いま動いてもうまくいかない」と言っているのである。

汚名を着せられたまま選挙に
憲法学者が示す「弾劾の抜け道」

 しかし、「上院の壁」や政治的なリスクを考慮して弾劾に踏み切れないペロシ議長にとって、魅力的とも思える提案をしている憲法学者がいる。

 ハーバード大学法科大学院のローレンス・トライブ教授は、民主党は下院ですぐに弾劾審問を開始し、そこで得たトランプ大統領の不正行為に関する情報や証拠をもとに大統領を公式に非難する「非難決議案」を可決すべきだと提案する。

 これは下院で弾劾訴追案を可決してから上院で弾劾裁判を行う通常の弾劾手続きとは異なる、「裏ワザ」ともいうべきものだが、民主党にとってはいくつか利点があるようだ。

 まずは、上院の弾劾裁判を経ずにトランプ大統領の不正行為を具体的に記録した、公式の非難声明を出せることである。これによって、大統領の不正を歴史にとどめ、「汚名」を着せることができる。その結果、大統領は汚名を着せられたまま再選の選挙を目指すことになり、苦戦を強いられ、落選の可能性が高まる。