米朝協議を急いでいる金正恩氏

 金正恩氏は、トランプ大統領のツイッターを見て今回の面会を決意したと述べた。僅か24時間で首脳会談が実現するのは異例。それは同時に、金正恩氏がどれだけ米朝首脳会談を欲していたか端的に物語っている。

 金正恩氏にとって、今年の北朝鮮の干ばつは深刻であり、1000万人が食糧不足に陥るといわれている。加えて、金正恩氏が軍部や党の忠誠を促す統治資金も枯渇に近いようである。

 トランプ氏は米朝関係の改善を「急いでいない」という態度だ。その半面、北朝鮮は交渉による制裁緩和を急いでいる。トランプ氏は制裁について、「制裁は外すことを楽しみにしているが、科したままだ」と述べた。今は、しっかりとした実務協議を行い、北朝鮮の譲歩を促す時だとみているのだ。

 一方で文大統領は、今回の会談に加わり南北プラス米国という形式の首脳会談とすることは出来なかった。米朝の仲介者役を自認していた文大統領としては、メンツをなくしたともいえる。しかし、トランプ大統領の訪韓をアレンジし、それが米朝の面会につながったことで、国内的には仲裁役を果たしたということで、一応の格好はついた。それ以上に、文大統領は米朝の交渉が進めば、北朝鮮と経済協力に道が開けると期待している。

 ただ、そううまくいくかどうかは北朝鮮の出方が鍵である。北朝鮮の対南宣伝メディアは、米朝の面会、会談があった30日、「南朝鮮当局が対米追従姿勢を捨てないならば南北関係は今日の状態から抜け出すことはできない」と非難している。朝鮮半島を巡る構図は、米、南北、中ロの利害を巡ってますます複雑になってきていることが、G20会合で改めて確認できたというところであろう。

(元・在韓国特命全権大使 武藤正敏)