大学時代の研究が認められ自信に
大学4年で話ができるようになる

 高校に入学すると、クラスメートがグループ化して、完全に周囲から孤立した。

「クラスに入って、最初に声をかけられたとき、うまく反応できなくて…。そのうち、声もかけてもらえなくなりました」

 学校へ行って、ただ授業を受け、家に帰るだけの毎日。その頃から、表情も固まってしまって、笑えない。クラスの集合写真も無表情。そんなキャラを演じ続けなければいけなかった。

 ただ、高校へ行かないという選択肢も、なぜか頭に浮かばなかった。

 成績は良くて、傍から見れば、大人しい「模範生徒」。学校で、問題視されることはなかった。

 大学受験も、とくに問題なく、大学に入ることができた。

 知り合いが1人もいないため、大学デビューのチャンスだったが、やはり大学デビューにも失敗する。

 大学は理系のため、実験の授業があった。学生が1つの班に5~6人ずつ分かれ、順に実験をしていく。実験中、間違っているところがあると、「それ違う」と、ポロッと一言、言葉が出るようになっていた。

 ただ、無駄話や世間話は、できずにいた。

 大学4年になると、研究室の自分の机で研究する。

 毎月、当番で、自分の研究内容を発表。皆で議論する。

「自分の感情を込めるのではなく、客観的事実を発表する状態なので、それほど抵抗がなかった。授業中、国語の音読を当てられて、決まった場所を読むような感じ。それに対して、教授や大学院の先輩、同期が質問してきて答える環境でした。そんなコミュニケーションに慣れていった機会がかなり大きかったように思います」

 こうしてAさんは、緘黙の症状が少し良くなったのではないかと振り返る。