「ここが踏ん張りどころだ」
そう思える何かがあるか

 会社が大変なときに残るか転職するかを判断するときの1つの重要な基準は、「ここが踏ん張りどころだ」と思わせる何かが会社や経営者、あるいは事業や仲間にあるかどうかだと思います。

 大変な時期には、好調なときは見えなかったことがあらわになり、社員には経営者の本性が見えやすくなります。業績が厳しくなり、社員の給与やボーナスを大幅に削っているのに役員報酬は一切下げないという社長が実際にいたりもします。そうした経営者と困難を一緒に乗り越える気にはならないでしょう。

 一方で、そうした状況下では経営者や周囲だけでなく、自分の素の在り方があらわになるときでもあります。さまざまな変化が起こる中、この経営者や仲間と続けてやっていこうと思うのか、転職して新たな場所での活躍を目指すのか。

 退職せずに働き続けることは大変ですが、熟考して残留を選択したメンバーは経営理念や事業に懸ける思いなどで強く結びついた仲間になるでしょう。厳しい環境でも、充実した仕事ができる可能性は十分にあります。

 以前、大規模災害が発生した際に事故を起こし、社会的な批判や業績悪化もあって大量の退職者を出した企業がありました。当社に相談に来られた方たちも少なからずいましたが、そのなかの1人からよい条件のオファーが出た後に、「申し訳ありませんが、今の会社に残ることにしました」と辞退の申し出がありました。

「やはり事故を起こした責任と仲間を考えて、この会社に骨を埋める決心をしました」

 その潔さがとても素晴らしく、「ぜひ頑張ってください」とお伝えしたことをよく覚えています。

(株式会社クライス・アンド・カンパニー代表取締役 丸山貴宏)