6月20日、岩手県紫波(しわ)郡紫波町にあるオガールプラザは、熱気に包まれていた。町民が待ちわびた施設がオープンするからだ。天候こそ曇り空だったものの、テープカットには周辺住民100名も参加、その日だけで紫波町民の3分の1に当たる、約1万人が来場したという。
紫波町は人口約3万3000人、JR盛岡駅から東北本線で南へ約20分ほど、県のほぼ中央部に位置する。このため大震災の被害は小さかった。
オガールプラザは、紫波町情報交流館(図書館、地域交流センター)という公共施設と民間テナントが入る、官民が融合した複合施設である。このプラザを含む都市開発事業が、紫波町が進める通称「オガールプロジェクト」だ。JR紫波中央駅前に広がる10.7ヘクタールの町有地を中心とした街づくりの試みである。
オガールとは、フランス語で駅を意味する「Gare」(ガール)と、紫波の方言で「成長」を意味する「おがる」から成る造語で、紫波町の持続的発展の願いが込められている。
このオガールプロジェクトは、PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ=公民連携)という手法で進められている。PPPとは、国や地方自治体が行う事業や公共サービスに、民間のおカネや知恵、ノウハウを取り入れることを言う。
オガールプロジェクトには、町民をはじめ多くの人たちの知恵が結集されているが、立役者はなんと言っても、紫波町の藤原孝町長とオガール紫波取締役兼オガールプラザ代表取締役を務める岡崎正信氏である。かたや庇護者、かたや実行部隊の実質的なリーダーという役回りで、プロジェクトをここまで引っ張ってきた。