東日本大震災は、東北地方に不可逆的な経済社会変化を生じさせた。東北地方の産業・生活基盤は、元の状況に戻すだけの復旧を超えて、復興後の環境変化を見越した「新興」を目指すことによって再生させる必要がある。
そのためには、理想的なビジョンを描くだけでは不十分で、東北の人口と産業集積の地域特性および被災状況を十分に勘案することが重要である。ここでは、東北地方を、①人口過疎化と産業基盤の地盤沈下にある沿岸部、②機械部品を中心とした産業集積と人口集中がみられる背骨部分、③背骨部分と沿岸部をつなぐ地域、の3つのゾーンに分類し、それぞれの状況に応じた産業新興を目指す必要があることを提言する。
復興需要に依存せず
構造的な問題を直視すべき
阪神・淡路大震災後には、復興需要によって、多くの雇用が生み出された。しかし、この“特需”の効果は一時的で、結局、兵庫県の就業者数は減少を続け、労働生産性も震災前以下の水準に落ち込んでしまった。
神戸港の修復までに、国際ハブ港としての機能を釜山や上海に奪取されたことの影響も大きい。復興需要が一巡した後に、地域産業が震災前から抱えてきた構造的な問題が、顕在化してきたためである(図表1)。今回の東北でも、同じことが繰り返されないだろうか。