円高ユーロ安が続いている。ところが、夏の欧州旅行では、「まったく同じ商品がないので比較はしにくいが、総じて昨年より5%程度、料金が上がっている」と、大手旅行会社の幹部は話す。
為替は昨年に比べて15%以上、ユーロ安になった。欧州行きの燃油サーチャージは、2011年8月の2万9000円に対して、今年8月は2万3500円に下がっている。にもかかわらず、ツアー料金は上がってしまったのだという。
その原因は欧州のホテル料金にある。「パリのホテルが2ケタ程度、上がっている」と関係者は言う。ロンドン五輪の影響で、ロンドンのホテルの予約が取れなくなってきたため、パリなど他の主要都市に需要が向かい、料金を押し上げているのだ。
加えて中国や韓国からのツアー客の増加で、ホテルの予約競争が激化していることも、宿泊料金アップの要因になっている。
しかし、値上がりに関係なく、欧州旅行の人気は高い。円高ユーロ安は日本人にとっては買い物がしやすく、財布のひもも緩むようだ。旅行会社が扱う夏の欧州ツアーは軒並み好調で、たとえば阪急交通社では伸び率は前年同期16%増という。「ビジネスクラスを利用したものや欧州でのクルーズがついたものが好調」と同社幹部は付け加える。
伸び率が高いのがオランダで、現に阪急の取扱高は前年同期比89%増だという。10年に1度、開催される「フロリアード」(4月5日~10月7日)というイベントや、日本でフェルメール展が開かれていることなどがオランダへの関心を強めたようだ。
海外旅行では、「安・近・短」の韓国や台湾、中国の人気が高い。その対極にある欧州だが、円高ユーロ安でチャンスが巡ってきた。その恩恵をめぐって、旅行会社の夏の陣が本格化しようとしている。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 大坪稚子)