オーバーツーリズム問題を
そろそろ真剣に考えるべきだ

 医師が自分のところを訪れた患者の言動を批判するというのは、かなり珍しい。最近では医療訴訟も多いので、「患者様」と呼び、機嫌を損ねるなどご法度なのだ。しかし、この医師は現実を訴えた。

 それほど、現場のスタッフたちが追い詰められていたということである。この構造は「八重山STYLE」の店主も全く同じである。日本で「日本人お断り」をすれば批判の嵐にあうのは当然だ。にもかかわらず、あのような張り紙を出さざるを得ないということは、そこまで追い詰められたのである。

 という話をしても、まだ納得をしない方もいらっしゃるかもしれない。

「日本人は、ハロウィンパーティ後の渋谷や、W杯の観戦スタンドで自主的にゴミ拾いをするなど、世界一マナーの良い国民だ。マナーの悪い者などほんの一握りの人間だ!」。そんな怒声が聞こえてきそうだが、実際には、そのような一部のマナーの素晴らしい日本人の功績を、勝手に日本人全員の手柄にすり替えているだけに過ぎないのではないか。

 大坂なおみ選手や、八村塁選手の活躍を受けて、「テニス大国ニッポン」とか「日本人のバスケもいよいよ世界レベルになってきた」とはしゃぐ、典型的な「個人と民族の混同」なのだ。

 実際、それを示すデータや事象は、我々の身の回りに溢れている。

 昨年、外食や介護業界などの労働組合が加盟するUAゼンセンが、サービス業の組合員およそ3万人を対象に調査をしたところ、業務中に顧客から悪質クレームなどの迷惑行為を受けたことがあるとの回答は73.8%に上っている。また、その前年の調査では、組合員5万件を対象に調査をしたところ、そのうちの約5割が「迷惑行為が増えている」と感じているという結果も出ている。

 繁華街や観光地に行けば、タピオカドリンクのプラごみが至るところに散乱している。これから多くなる花火大会でも、焼きそばやらの食べ残しがあちこちに捨てられる。そして、今回の舞台となった石垣でもそうだ。外国人観光客が増えるはるか以前から、海岸ではペットボトルやタバコなどのゴミが散乱している。漂着したゴミも多いが、ここで遊んだ観光客が捨てたものも決して少なくない。山ではタバコのポイ捨ても多い。

 石垣で暮らす人たちはずっと、「日本人」による「観光公害」に悩まされてきたのだ。

 SNSを見ると、「八重山STYLE」の客が激減したことを、まるで鬼の首を取ったかのように喜んでいる人たちもいるが、「客商売のくせに、客を軽く見るからそういう痛い目にあうのだ」なんて考えが当たり前のうちは、この国の「観光公害」問題はいつまでも解決されない。

 日本は、外国人観光客に対しては、やれマナーが悪い、ルールを守れないなら出ていけと厳しくのぞむが、自国の観光客の横暴さは、「接客態度が悪い」「店が調子に乗っている」なんて感じでスルーする傾向がある。

 このダブルスタンダードと向き合わない限り、観光立国もへったくれもない。

 オーバーツーリズム(観光客が過剰に押し寄せること)が世界的にも問題になる今だからこそ、美しい石垣の自然や、石垣で生活をする人たちが「観光客のおもてなし奴隷」にならないような、包括的な取り組みが求められているのではないか。