この問題を日韓の歴史・外交問題と位置付けられると、日本から見れば主張のすり替えなのだが、シンプルで大きな声は意外と世界中に届きやすいため、いつしか「日本が日韓の経済協力関係を壊すために意図的に行っている」という話にされてしまうかもしれない。すでに日本の措置を、トランプ政権の対中経済政策と同列に扱う論評もある。

 しかしよく考えれば、経済制裁を堂々と自認しているアメリカと、これは制裁ではなく安保貿易の話だとする日本では、全くアナロジーにならないことに気づくはずである。とはいえ重要なことは、世界はいつもそれほど熱心に日本や韓国に注目しているわけではないということだ。わかりやすい例を挙げると、南米でベネズエラとコロンビアが対立していることを知っている日本人は少ないだろうし、聞いても興味をあまり持たないだろう。

「いつかわかってくれる」は
国際社会では通用しない

 今回の日韓問題も、同じことだと思えばよい。欧米人から見れば、アジアの2国間対立など、「ちょっとニュースで見た程度」の話に過ぎない。こうした基本的に無関心な国際世論に対して、日本の立場を広めていくにはどうすればよいかという観点で、日本の広報活動をしていかなければならない。

「論理的に物事を考えていれば、いつしかわかってくれるかもしれない」「わかってくれる人がわかってくれればよい」という考え方は、国際社会では美徳ではない。このあたりの価値観は、日本企業にも見られる日本人的な発想なのかもしれない。日本企業も、「良い技術を開発し、良い商品をつくっていれば、いつか消費者はわかってくれる」と思い込み、さまざまなビジネスチャンスをふいにしてきた。

 自分の考えをしっかり効果的に伝えるということも、特に価値観の異なる人たちの集合体である国際社会においては必要である。感情的な議論をするのではなく、客観的な事実や論理だけを世界に向けて発信していくことが、日本政府にも日本人にも求められているのだ。

(早稲田大学大学院経営管理研究科教授 長内 厚)