カシオ計算機が5月から皮膚科医向けの医療機器として販売するコンパクトデジタルカメラ「ダーモカメラ『DZ-D100』」 Photo by M.T.

 カシオのコンデジはもう見られないのか。一抹の寂しさを抱くカメラファンは意外な場所で再会を果たして驚くかもしれない。意外な場所とはなんと病院。カシオは今年5月、皮膚科医向けの医療機器として、コンデジ発売を再開したのだ。

 皮膚観察用「ダーモカメラ『DZ-D100』」(税抜き19万9000円、2016万画素)。92年発売の腕時計型血圧ウオッチャー「血圧ウオッチャー BP-100」以来、カシオとして医療機器2機目となる。

コンデジ23年の技術資産を無駄にしない

「材料はあるのでレシピを変えた」とDC企画推進部の北條芳治部長が話すように、23年間コンデジを展開してきたカシオには画像変換技術や画像解析技術といった技術資産があり、それらを医療現場のニーズに最適化すること自体は比較的容易だった。

 これまで皮膚科医は専用レンズを外付けしたコンシューマー向けのデジカメで病変部を接写することが一般的で、「カメラが大きく、重い」「通常撮影時にレンズ交換が面倒」「通常撮影時とカメラ2台を使い分けなければいけない」といった不満があった。カシオのダーモカメラ「DZ-D100」は、従来品より「小さく、軽い」「レンズ交換不要」「カメラ2台を使い分ける必要がない」といった利便性を実現した。

 カメラは千葉大学と、撮影画像の管理用ソフトは信州大学と共同研究した。皮膚内部の色や構造を確認するのに必要な偏光撮影、皮膚の表面の病変部を記録する非偏光撮影、隠れたシミやぼやけた黒子の辺縁部をくっきりと写すUV撮影をワンシャッターで実現。手軽に扱える診療ツールに仕上がった。

国内医師32万人、歯科医師10.5万人がターゲット

 国内の皮膚科医は約9000人(厚生労働省の「16年医師・歯科医師・薬剤師調査の概況」、以下同じ)のため、「ダーモカメラ『DZ-D100』」だけなら売り上げは限定的だが、カシオは医療用コンデジのターゲットを皮膚科医だけにとどめるつもりはない。画像診療はほぼすべての診療科で行われており、カシオは国内の医師約32万人、歯科医師約10.5万人のほぼすべてを視野に入れる。

 とはいえ、コンシューマー向けコンデジでは青天井だった想定ユーザー数が、医師向けコンデジでは計40万人余り。さらに診療科ごとで分断されたマーケットだ。いかに開発や投資の効率を高めるか。カシオはコンデジの構造で解決することにした。

 カシオはすべての医師向けコンデジで、本体部分の「コアユニット」と、レンズ、ライト部分の「ファンクションユニット」に分けて設計する。コアユニットは汎用性の高い電子デバイス、電池などを使い、皮膚科医向けコンデジ以外でもこの部分は共通。一方でファンクションユニットは対象とする診療科ごとに最適化したものを開発する。その結果、開発や投資の効率が良く、専門性も高いビジネスモデルに仕上がった。

産婦人科用コンデジ「コルポカメラ」の試作機
産婦人科用コンデジ「コルポカメラ」の試作機 写真提供:カシオ計算機

 カシオは20年度発売を目標に、昭和大学との共同研究で産婦人科用コンデジ「コルポカメラ」を開発中。産婦人科(産科、婦人科含む)医師は約1万3000人。使いやすさはもちろん、価格優位性があるため、大病院中心だった検査が中小病院に広がる可能性があるという。

 他にも歯科・口腔外科向けなどで、開発の下準備が始まっている。

 北條部長は、「カシオにはコンデジのプライドと文化がある」と胸を張る。医師向けコンデジはまだ始まったばかりのビジネスだが海外展開を視野に入れており、今後大きく成長する可能性を秘めている。